第5場回想パティへの手紙

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パティへ


勉強は、はかどっていますか?

アニーもアーチーもわたしも、パティのことをよく思い出して、懐かしんでいます。

この間の手紙で、アーロンとわたしのことを、訊いてきたでしょう。

──不思議ね。

いつからアーロンに恋をしていたのか、言えないのよ。

結局わたし達二人は、収まるところに収まったってことかしら。

時々だけれど、わたしのアーロンへの愛情は、あなたやアニー、アーチーやアルバートさんへの愛情と、あまり変わりないのではないかと、思ってしまいます。

でも、全く違うと思うこともあります。

アンソニーのように、アーロンも花束をくれるので、驚かされています。

アーロンの優しさに心が動かされます。

何ヶ月もかけて、わたしのサプライズバースデーパーティーを計画してくれました。

ケーキには、"Sweet Candy" って書いてあったのよ。

先月、街で雑貨屋を営むベインさんが、アン・アーバーにあるホテルから仕入れた珍しい日本茶を、売っていました。

値段を見たらとても高かったのよ。

ベインさんが、わたしに匂いを嗅がせてくれて、たった一回だけアーロンに『あのお茶を試してみたいなあ』って、言った事がありました。

でも、アーロンがベインさんの店で買おうとした時には、もう売り切れでした。

そうしたらアーロンは、週末にわざわざそのお茶をアン・アーバーまで、わたしの為に買いに行ってくれました。

アーロンと一緒にいる時、──時々、もし、アンソニーが生きていて、共に大人になっていったらどんなだったろうと思います......。

でも、そんなふうに考えてはいけないのよね。

アーロンはアーロンで、アンソニーの影ではないのだから。

アーロンを知っていくうちに、彼の好きなところをたくさん見つけています。

アーロンはいつも陽気で、何処に行くにも幸せを運んでいきます。

アーロンは今まで会った人の中で、一番賢い人です。(ステアは別よ、勿論!)

アーロンがボストンに行っていたら、もっと出世していたでしょう。

お母様のジェーン夫人と妹のセシリアは、今まで持つことのなかった家族になります。

でもね、パティ......。あなたにしか言えない事があります。

わたしには、アーロンが必要ってわかるのよ、だってアーロンと一緒にいると、私の心はいつも落ち着いて安心していられるの。アーロンに手を握られると、平穏と平和を感じます。

その穏やかさはまるで私を守る盾のようです。

以前、アーロンが二人の可能性について訊ねてきた時、わたしは、また誰かを愛することが出来るのかと、自問しました。

恋をしている自分を思うと、漠然とした鼓動の音が聞こえます。

その音は、見つけられるのを恐れている場所へと、導いているようです。

でもね、そこには行きたくないのよ。

その場所は、再び知ってしまうのが怖い、かつて知っていた炎に包まれているのだから───。

アーロンに心を開いて、その音をまた聞くことが怖かったの。

でも、不思議ともう怖くありません。

アーロンと一緒にいると、アーロンの腕に包まれていると、わたしは安心でいられます。

だから......、パティには知っていて欲しいの、......わたしは幸せよ。

またすぐに手紙を書きます。

いつも変わらない沢山の愛を込めて

キャンディ

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now