「着いたよ」
テリィは、長い道のりを走りながら言った。
やがてその道は、森の中に広がる美しい建物に続いていた。
晴れた夏の日だった。
空気は刈られたばかりの芝の香りに満ちていた。
息を呑むほど美しい景色だった。
外観を見る限り、建物は巨大な五角形で、乳白色の柱に支えられたポーチに囲まれていた。
左側には噴水があり、その真ん中には、両手に水瓶を携え、トーガに包まれたロマネスク様式の女性の像があった。
水が両瓶から絶え間なく流れ出す様は、見事な滝を作り出しているように見えた。
「ここはどこなの、テリィ?ここで何をするの?」
キャンディは、華やかな光景に見とれながら言った。
「ここは、ヒルクレスト荘さ。ここで4日間過ごすんだ。どうだい?」
テリィは、車から降りながら興奮気味に言った。
「ここで過ごすってどういうこと?そんなの無理よ。わたし、着替えも何も持ってきていないのよ!」
しかしテリィは、助手席側に回ってくると、キャンディの為にドアを開け、キャンディの手を掴むと自動車から降りるよう促した。
「さぁさぁ!」
テリィはキャンディを建物の方へと引っ張っていく。
「どうやってここを見つけたの?」
「おれにだって、こね位あるさ」
テリィは、遊び心たっぷりの笑顔を向けた。「たった一晩で全部計画したの? そんなの信じられないわ!」
「実を言うと、ポニーの丘で君と再会したあと、すぐに計画したんだ。君がおれを受け入れてくれるなら、ここに君を連れてこようと思ってね」
テリィの笑顔は茶目っ気を帯びてきた。テリィはキャンディを引き寄せて、続けた。
「君と愛の語らいをするには、ポニーの家の子供達やシスター達は邪魔だろ?」
テリィの顔は、キャンディの顔から10cmと離れていなかった。「テリィ!」
キャンディは、テリィを叱りながら少し離れた。実際には、こんなにテリィに近づいて、キャンディの心はとろけそうだった。
「行こうぜ!レディ・ソバカス」
片手にスーツケースを持ち、もう一方でキャンディの手を掴むと、テリィは入口へと向かって行った。
歩きながら、キャンディは不安に襲われた。
(......テリィったら、一体ここで一緒に何をどうしようっていうのかしら?もしかしたら......)キャンディには、それ以上考える勇気はなかった。
胸の鼓動が激しくなる。すると、キャンディの脳裏にアーロンがよぎり、キャンディは、何をすべきか迷い始めた。
キャンディは、誰かが話しかけていることに気づかなかった。
「キャンディさん?キャンディさん、大丈夫ですか?」
キャンディとテリィは、ロビーに立っていた。
女性がキャンディに話しかけていた。お洒落な着こなしの30代半ばらしい女性だった。
彼女は、肘丈袖のライムグリーンの絹のフラッパードレスを着ていた。
漆黒の髪はとても短くカットされ、ビーズをあしらったスカルキャップを被っていた。
濃い赤い口紅をあてがい、目には派手な厚化粧を施していた。
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The One I Love Belongs to Somebody Else 〜それでも君を愛してる〜 By Alexa Kang
Fanfiction小説キャンディキャンディファイナルストーリー後に書かれた、Alexa Kang による二次小説を、ご本人の許可を得て翻訳、編集した日本語版です。編集にあたり、若干のご協力を頂きました。いがらしゆみこ氏、名木田恵子氏が生み出した登場人物にあわせ、二次オリジナルキャラも登場します。