エピローグ

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再会を果たしたあの日、あんなふうにわたしは再び英国行きの船に乗ることとなった。

今だに信じられない──。

前回のロンドンへの船旅では、アンソニーの死の影が重くのしかかっていた。

それでもなお、船はどんどんアンソニーから離れていった。

その長い新しい旅は、わたしを最愛の人と巡り合わせてくれた。

(アンソニー、あなたはきっと、私を見守ってくれているのよね。今、わたしはまた船の上で、そばにはあのひとがいるのよ)

わたしは、光り輝く道が目の前に広がっているのを感じていた。

結局のところ、ドレスを持たせてくれたアーチーに感謝することとなった。

わたしは、豪華客船の一等室に相応しい洋服は持ち合わせていなかったから。

アーチーのセンスの良さにも感嘆せざるを得なかった。

ヒルクレスト荘でカサンドラから借りたような豪華さは無いものの、ドレスはどれも優雅で洗練されていた。

それに、船上でテリィと一緒にいると、時々テリィに気づく人もいた。

そういう人達は、興味深げな視線を向けたり、ささやきあっていた。

テリィは、気にしていなかったけれど──。

そんなテリィは、ずっとわたしの手を握ったまま、決して離すことはなかった。

まるで一度離してしまったら、わたしが消えてしまって、もう二度と見つけられなくなると、怖れてでもいるように──。

1日目の夜、わたしたちは船のデッキから海を眺めていた。

前回ロンドンに向けて旅立った大晦日のあの夜のように、霧に覆われていた。

背後からは、乗船客を歓迎するパーティーが催されているダイニングホールの賑やかな音楽や楽しげな笑い声が聞こえてきた。

わたしは、海洋に広がる漆黒の夜を見つめていた。

真っ暗だった。

霧の隙間から時折垣間見える空には、星明かりがあるだけ──。

わたしを抱きしめているテリィは、喧騒から遠ざかり二人だけでいることを楽しんでいるようだった。

「ごらんよキャンディ。おれたちが初めてあった夜みたいだ」

わたしはテリィを見つめた。

そこにはわたしが愛してやまない笑顔があった。

突然、海から視線をわたしに向けて、テリィが言った。

「ここで結婚しよう、明日」

「ここで結婚?明日?そんなこと出来るの?」

おどけるように笑って訊いた。

「あゝ船長だよ。海の上では結婚式を執り行う権限があるんだ」

興奮を隠せない声で続けた。

「どうだい?しようぜ!」

わたしは、テリィを見た。

わたし自身も喜びを隠せなかった。

「本気なの?」

「もう二度と、何にも、誰にも、邪魔をされたくないんだ。おれ達の仲を」

テリィは、強い意思のこもった声で言い放った。

わたしは、頷いて笑ってみせた。

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⏰ Last updated: Jan 29 ⏰

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The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now