第25場カサンドラとの晩餐

4 0 0
                                    


長い間キャンディとテリィは、並んで湖を見ていた。
森を抜けた湖のそばで、時は止まっているようだった。

「ごらん。あれがこの世で一番古い色......空と水の色」

キャンディは、そよ風が吹くごとにテリィがささやくのを聞いた。


日没だった。

キャンディもテリィも、1日が終わって欲しくなかった。
それでもだんだん暗くなってきて、二人はホテルに戻らざるを得なかった。

ゆっくりと歩いて行った。
誰もいないからか、テリィは、キャンディとしっかりと手をつないでいた。

ホテルに戻った二人は、カサンドラに温かく迎えられた。

「キャンディ!夕食に備えて着替えましょうね。さあこちらへどうぞ」
カサンドラは、キャンディの手を取ると、二階のキャンディの部屋へと向かった。

メイドも一緒についてきた。
テリィは、ほほ笑みながらその様子を見ていた。

キャンディの部屋のベッドの上には、何着ものドレスが広げられていた。
どのドレスもうっとりするほど美しかった。

それらは、時々ファッション雑誌で見たことのある、けれどキャンディ自身が決して着ないような洗練されたフラッパードレスだった。

「どう思って?」
カサンドラは、大きな笑みをたたえながら、キャンディに訊いた。

「引退して、田舎暮らしかもしれないけれど、お洒落のセンスとクローゼットの中身は捨てていないのよ。ドレスなんてありすぎて数え切れないわ。気に入ったのなら差し上げてよ」

「そんな、とてもいただけません」
キャンディは、恭しく言った。

「あらあら、遠慮深い方だったのね」
カサンドラは、そう言うと、ベッドから柔らかいシフォン生地のピーチ色のドレスを選んだ。

大きく開いた襟元、深いV字型は背中を顕にし、シフォンで作られた花飾りが腰にあしらわれていた。

「今夜はこのドレスを着るといいわ」

「大胆過ぎます!」
キャンディは、声を上げた。

「あらまあ!もしあなたが、あの話題に事欠かないテリュース・グレアムの恋人なら、これ位しないと。特に二人一緒の写真を撮られた時なんてどうなさるの?」

(テリュース・グレアムの、......恋、人、......)
キャンディの心は、その甘美な響きで満たされた。

「テリュースは、公の場が嫌いよ。でも役者には避けられないわ。だから結局、後ろめたいことなど何もないと、堂々としてればよろしいのでなくって?着ているものについての批判など、特にさせるべきではないわ」

(テリィは、公の場が好きではない......。もし、婚約者のいる女性とテリィが一緒にいると知ったら、世間はテリィを中傷するのかしら?)

キャンディは、自分達の行動によって引き起こされるかもしれない事態を思うと、苦悩した。

「このネックレスがドレスに良く似合うわ」
カサンドラは、机の上に置かれた大きな宝石箱の中から、真珠の長いネックレスを取り出すと、メイドに指示をした。

「チェルシー、キャンディさんの着替えを手伝ってあげてちょうだい。髪型も変えてさしあげてね。わたしは下に戻りますから」

カサンドラは、再びキャンディをからかうように見ると、部屋を出ていった。


キャンディが晩餐用に身支度をしている間、テリィは既に着替えをおえていた。

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangOn viuen les histories. Descobreix ara