第19場ポニーの家で待つアーロン

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キャンディがポニーの家に戻った時には、子供達は既に眠りについていた。
そっとつま先立ちで中に入り、いつもと変わらないことを確認してから再び外に出た。


そして、今はキャンディの住まいである、ポニーの家の裏手に建てられた、小さなワンルーム型の部屋に入っていった。


ソファーでは、アーロンが医療書を読みながら寝入ってしまっていた。

キャンディは近づいてアーロンの横に座った。

アーロンの寝顔を見つめるキャンディの心には、穏やかさと暖かさがこみ上げてきた。

思わず笑みがこぼれた。

キャンディの気配に気づいたのか、アーロンが目をさました。

アーロンは、キャンディの緑色の瞳が、自分を覗き込むように見つめていることに気づいた。
キャンディの顔はとても近くにあった。

「戻ったんだね」

キャンディは頷いた。

「眠ってしまっていたのね。ここで何をしていたの?」

「君を......待っていたんだよ」

アーロンは囁いた。

寝入ってしまう前は、まだ陽は出ていたが、外はもう暗く室内の薄暗い灯りだけが灯っていた。

目の前にいるキャンディは、まるで幻のようだった。

アーロンは、手を伸ばすとキャンディの頬に触れた。

キャンディは、アーロンを見ていると、心が安らぎに満たされていくのを感じ、優しく頬をなでているアーロンの手のひらにギュッと頬を押しあてた。

無言のまま座って、二人でいる瞬間を堪能した。

「......ドレスは気に入ったかい?」

沈黙を破ってアーロンが聞いた。

「......とても素敵なドレスよ」

「君は世界中で最も美しい花嫁になるよ。君がいてくれて、僕はとても幸運さ」

キャンディは、不安げにほほ笑み返した。

「もう、......遅いな。......帰らないと」

アーロンは、ゆっくりと立ち上がりながら、心の中で思った。
(このまま一緒にいられたら......)


出口までキャンディに見送られたアーロンが、去り際に告げた。
「僕は、明後日シカゴに行くよ。医学会があるからね」

( 医学会。忘れていたわ )
キャンディは心の中で思った。

「おやすみ」

アーロンは、囁くとキャンディを引き寄せておでこにそっとキスをした。

「おやすみなさい」
キャンディは、囁き返すと扉を閉めた。


一人になったキャンディは、今日起こった出来事を思い出していた。

(テリィには、ノーと言わなくてはいけない。わたしは、ジェーン夫人を失望させる気持ちなんて持ち合わせていない......。それに、アーロンを愛している。彼を......傷つけられない。アーロンは、いつも、誰よりも何よりも、わたしを大切に想ってくれるのだから......)

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now