第24場森の中の人

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急いで下の階に降りていったキャンディだが、そこには誰もいなかった。
キャンディは、テリィの部屋が何処か知らなかった。

窓から射し込んでいる陽の光に誘われて、キャンディは庭に出てみることにした。

ポーチに立ちながら、芝生と草花の少し強い香りが混じり合った夏の空気を、思い切り吸い込んだ。

キャンディは、ここに来て良かったとすっかり思い始めていた。
サウス・ヘヴンやポニーの丘から出発してから、随分と時間がたっているように感じた。

外に歩き出したキャンディは、森の中へと入っていった。
頭上では、鳥たちがさえずっている。

キャンディは、何も悩むことなくこの4日間を楽しもうと決めた。
思うがままに走り回って、深呼吸して、夏の森の空気がキャンディの身体に満ちていった。

──きっと誰もわたしがいないことに気づかないわ。
それに、もし気づいたとしても......。

キャンディは、考えるのをやめた。
何をしようとしているのか、キャンディには自分でも分からなかった。

こんな無鉄砲さは、キャンディらしくなかった。
でも否定するなんて無意味ね。
キャンディは、テリィとここにいられて意気揚々としていた。

森を歩きながら、キャンディは、スコットランドのホワイトパーティの日の事を思い出していた。

白い服を着たテリィも、馬に乗って現れるべきね。
キャンディは自分の冗談にクスクスと笑った。

森を抜けると、目の前には湖が広がっていた。
湖面は、太陽の光が反射してキラキラと輝いている。

夏の風が吹き抜ける。

キャンディは、目を閉じてまぶたに射す陽の光を楽しんでいた。

そうして、二度と会うことが叶わないと思っていた、でもまるで夢の中で会っているかのような──今、自分と一緒にいる人のことを、──想った。

キャンディは、背後で木の葉が揺れる音を聞いた。

目を閉じたままのキャンディは、その人物が自分の名前を優しくささやきながら後ろから抱き締めているのを感じていた。

優しいささやきは、キャンディの脚を震わせた。

ホテルを出たキャンディが、森に入っていくのを見ていたテリィは、こっそり後をつけてきていた。

それはまるで遠い昔、セントポール学院の森でしていたことのようだった。
木の上や原っぱで寝転んでいたテリィは、キャンディが他人に世話を焼いたり、気を配ったり、にせポニーの丘のあちらこちらを走り回っているのを見ながら、度々時間を潰していた。

キャンディの後をつける──。
笑みを隠せない。

キャンディの行動を見ているのは、いつも楽しかった。

やがてテリィは、静かにキャンディに近づいた。

──キャンディを抱きしめずにはいられなかった──。
もう、......二度と、......離したく、......ない......。

キャンディが目を開けると、リスが横切っていくのが見えた。
テリィは、キャンディの頭の上に自分の顎を乗せた。

キャンディは、自分の身体がテリィにピッタリと寄り添っているのを感じていた。
身体は炎のように熱く燃えている......。

キャンディは、わずかに振り向いた。

テリィは、俯いてキャンディに口づけをした。


──永遠に、──自分の腕の中に、抱き締めていたいと願いながら......。

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now