第21場テリィを再訪

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クレアモント・インに近づくにつれ、キャンディは、テリィの言葉を思い出していた。

『おれはこのベンチで、毎日君を待つよ。おれを選ぶのか、彼との結婚を選ぶのか決めるまでな!』

( テリィは、本当にベンチで待っているのかしら? )

キャンディは、2日前にテリィと一緒に歩いた道をたどっていった。
二人で語り合ったベンチに近づくと、テリィが一人ベンチに座り本を読んでいるのが見えた。

(──こんなにテリィに会いたかったなんて......)

「......テリィ?」

ャンディは、近づきながら声をかけた。

「キャンディ!」

リィは驚いて立ちあがると、キャンディを見た。
信じられなかった。
抱きしめたい衝動に駆られた。

「二度と来てくれないんじゃないかと思っていたんだ。この間から毎日ここにいたんだぜ」

見つめ合う二人。

ャンディは、テリィから目を逸らせない。

「 ──今も、シェークスピアを読んでいるの?」

ャンディは、思いついたままの言葉を口にしていた。

テリィは、ほほ笑むと本を掲げた。

"真夏の夜の夢 " さ。このお芝居の最も有名なセリフを知っているかい?」


「なあに?」

「真実の愛は決して簡単ではない」

リィは、そう応えると付け足した。

「まさに同感だな」

「......その通りね。......ロミオとジュリエットは......もう読まないの?」

ャンディは、話題を変えた。

テリィは笑った。

「......いいや。悲しい結末は、もう嫌なんだ」

キャンディは、息を深く吸い込むと足元を見下ろした。


やがて二人はゆっくりと、歩き始めた。

の朝の陽射しは、まだ穏やかだった。
朝霧は徐々に消えていく。
木の上では鳥達がさえずっていた。


「──教えてくれないか?キャンディ。──これまでどうしていたのか」
真剣な口調でテリィが訊いた。

「......そんなに......悪いものでもなかったのよ、......本当よ。悪くはなかったの、全然......」

ャンディは、テリィにほほ笑んだ。


テリィは一心にキャンディを見つめている。

ャンディは、ほほが熱くなるのを感じた。
顔が赤くなってはいるかもと、テリィに気づかれなければいいと願った。


「──アルバートさんがね、実は、アルバートさんが、ウィリアム大おじさまだったのよ。ウィリアム・アルバート・アードレー。アルバートさんが、わたしを養女にしてくださった、アードレー家の大総長だったの」

「本当か?」

リィは、驚いて言った。

「アルバートさんは、記憶を取り戻してから、やっと皆に自分の正体を明かしたの。わたし達は、皆とても驚いたのよ。わたしのことをずっと見守ってきてくれていたのに、それを全く知らずにいたなんて......。でもその後は、アードレー家の大総長としての責任を担って、会いたくても、中々会えなくなってしまったの。暫くして、サン・パウロに向けて旅立ってからは、時々そこをまた訪ねたり、他にもいろいろな都市に行っているのよ」

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now