第15場ポニーの丘での再会

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2週間が過ぎた。

──夕暮れ。

キャンディは、ナラの木のてっぺんから夕焼けを見ていると、ステアに近づいたように感じていた。

(でも木登りするには、もう大人気ないわね。レディらしくないわね )

キャンディはクスッと笑ったが、なんの苦もなくお父さんの木に登りつめた。

アーロンとセシリアは母親の元を訪ねていた。

キャンディは、いつになく一緒に行くのをやめた。

テリィの手紙を受け取ってからのキャンディは、キャンディらしくなかった。

キャンディは、いまだにどうすべきか決めかねていた。

空を見上げながら物思いにふけっていたキャンディは、ポニーの丘を登りつめ、木の下から自分を見つめている人物に気づくよしもなかった。

その人物は、ポニーの家を見渡せる小さな丘を登って来ていた。

"彼" にはキャンディが木のてっぺんに座っているのが見える。

キャンディは、空を見上げている。

"彼" が木の真下に辿り着いても、キャンディは気づかない。

しばらくの間、"彼" は、キャンディを見つめていた。

"彼" にはキャンディが目の前にいる事が、信じられなかった。

"彼" は、キャンディを見ながら、キャンディの姿を "彼" の心に永遠に焼き付けてしまいたかった。

"彼" は、不安げに息をしたが、最初になんと言えばいいか、わからなかった。

キャンディは、木の幹にもたれ、陽の入りを見つめながら時間の立つのを忘れていた。

キャンディは、未知の世界へ勇敢に立ち向かい、広大な空に飛び去っていくステアを思っていた。

『ステアは、君の幸せを望んでいたんだ』
アーチーは言った。

「ステア、私どうしたらいいの?」
キャンディは、声に出して言うと、頬を伝う涙を手の甲で拭った。

テリィは、木の下からキャンディを見ていた。

心に刻まれているロミオとジュリエットのバルコニーの場面のセリフが頭によぎった。

あれは彼女だ あー私の愛する人!

あーこの心は伝わっているはず!

何も話さない 話してはいないがそれが何だ?

眼が語っている それに応えよう

いや待て待て 彼女が語っているのは僕ではない

天界でもっとも美しい二つの星が

用を済ませて戻るまで かわりに光って欲しいとでも

彼女に頼んだのだろう

彼女の瞳が天空で 星が彼女の顔で光るとしたら どうだ

昼間に灯したランプのように 彼女の頬の輝きに

星たちは顔色を失うだろう

逆に天空は彼女の瞳に照らされ

鳥たちは夜明けの歌を歌い始めるに違いない

見よ!彼女が頬を手に乗せる!

ああ、あの手袋になれたなら

あの頬に触れられるかもしれないのに*7

テリィは、一人笑った。

まさにその時キャンディが下を見た。

キャンディの視界は、涙でまだはっきりしなかったが、自分が見ているものが現実なのかどうかもわからなかった。

──キャンディとテリィは、お互いに見つめ合った。

無言のままで。

ゆっくりと、キャンディは、自分が実際に見ている人物が、木の下にいるテリィだと理解した。

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now