第6幕アンコール 第36場アーロンからの手紙

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"キャンディへ

僕からの手紙を迷惑だと思って欲しくはないのだが。

あれから随分経ってからの連絡など、困っているに違いない。

でも、これが最初で、最後だ──。

去年、ボストンへ引っ越したんだ。

サウス・ヘヴンに移り住む前に予定していた病院での仕事にも就くことが出来た。

外科医として働いている。

当初、ハッピー診療所でののんびりした環境から、大都会に慣れ親しむのはかなり苦労したよ。

でもそれは日ごとに馴染んでいき、今ではすっかり落ち着いて、僕はここで幸せだよ。

僕がサウス・ヘヴンを離れたのは、ポニーの家が、君にとってとても特別な場所であると知っているからなんだ。

もし、僕がまだあそこにいたら、君とテリュース・グレアムが帰郷した時に、気まずい思いをするだろうと思ったんだ。

あそこがいつでも帰れる、君の悩みを取り払い、くつろげる場所のままであり続けるよう願っている。

──それを君に、知っていて欲しかったんだ。

勿論、全てが君のためだけではないけれどね。

君が去った後は、何もかもがその輝きを失ってしまったように感じられた。

僕自身も人生の次のページを始めたかった──。

変化はいいもんだね。

アルバートさんが何度も訪ねてきてくれたよ。

大抵の場合、湖でのセイリングだった。

あれは、何度目かの時だったかな。

君とグレアムさんのことを少しずつ話してくれたんだ。

──ずっと昔に、君達二人が払わざるをえなかった犠牲のことなどを。

僕がハッピー診療所を辞める決意を伝える時に、アルバートさんがどんな反応をするのか心配だった。

ところが、アルバートさんはとても良く理解してくれた上に、僕の保証人としてボストン病院に推薦状まで書いてくれたんだ。

それに、結婚式もあったんだよ。

あの後すぐに、ジェイミー・ロウェルがセシリアにプロポーズしたんだ。

結婚までも早かったな。

結婚式当日には、セシリアは母が君の為に作ったウェディング・ドレスを着たんだ。

ポニー先生、レイン先生、ポニーの家の子供達も出席してくれた。

子供達は皆、セシリアがおとぎ話のプリンセスになったと思っていたようだったよ。

なんの申し分の無い自慢の妹だ。

君の幸せを祈っている。

アーロン"







The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa Kangحيث تعيش القصص. اكتشف الآن