第2幕開幕 第6場アーロンのプロポーズ

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キャンディは、指にはめられ輝いているエメラルドの指輪を見つめていた。
半年前に、プロポーズと共にアーロンから贈られた婚約指輪。

『──エメラルドを見た時に、君の瞳を思いだしたんだ 』

「これからの人生を君と一緒に過ごしたいんだ、キャンディ」

キャンディは、アーロンの真摯な言葉に心を深く動かされた。

温かさがキャンディの胸に広がった。

キャンディには、これ以上の素敵な事など何も思いつかなかった。

キャンディとアーロンは、診療所で一緒に働いている。

子供好きなセシリアは、今ではポニーの家で正式に働いている。

セシリアの恋人のジェイミー・ロゥエルは、公私共に良き支えとなっていた。

ここでは皆が幸せでいられる。

アーロンは、キャンディがプロポーズを受け入れた時に、初めて口づけをした。

アーロンの口づけはとても優しく、紳士的だった。

(アンソニーもきっとこんな風に口づけしてくれたわね......)

キャンディは、口づけを返しながら含み笑いを浮かべた。

ところが、それは突然乱雑な思いに入れ替わってしまった。

『アンソニーなら、アンソニーなら......』*3

『アンソニーなら、なんだっていうんだ!? え? もっと、やさしいって言いたいのか?奴は死んだんだろ? 死んだ奴のことがどうしてわかる?』

──胸の鼓動の音は大きくなっていった。

キャンディは音を消し去るようにアーロンにしがみついた。

(そうよ!あなたの言う通り、死んでしまった人の何が分かるっていうの!......そんなの分からないわ!......じゃあ、生きていても二度と会うことが叶わないあなたの......あなたの一体何を分かれと言うの?)

******


キャンディは、テリィのことを思っていた。

『──ぼくは何も変わっていない』*1

キャンディは、再びその言葉を読み返した。

変わりはないか?
──彼はそう......訊いている。

キャンディは、エメラルドの婚約指輪をもう一度見つめた。

(私、......婚約したの)

(返事なんて、書けないわ......よね? )

キャンディにはどうしていいのか──分からなかった──。





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参考資料
*4
名木田恵子著
小説キャンディキャンディファイナルストーリー下巻
祥伝社 2010年11月10日 発行
28-29頁

*1
上記と同じ
283頁

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangDonde viven las historias. Descúbrelo ahora