キャンディは、指にはめられ輝いているエメラルドの指輪を見つめていた。
半年前に、プロポーズと共にアーロンから贈られた婚約指輪。『──エメラルドを見た時に、君の瞳を思いだしたんだ 』
「これからの人生を君と一緒に過ごしたいんだ、キャンディ」
キャンディは、アーロンの真摯な言葉に心を深く動かされた。
温かさがキャンディの胸に広がった。
キャンディには、これ以上の素敵な事など何も思いつかなかった。
キャンディとアーロンは、診療所で一緒に働いている。
子供好きなセシリアは、今ではポニーの家で正式に働いている。
セシリアの恋人のジェイミー・ロゥエルは、公私共に良き支えとなっていた。
ここでは皆が幸せでいられる。
アーロンは、キャンディがプロポーズを受け入れた時に、初めて口づけをした。
アーロンの口づけはとても優しく、紳士的だった。
(アンソニーもきっとこんな風に口づけしてくれたわね......)
キャンディは、口づけを返しながら含み笑いを浮かべた。
ところが、それは突然乱雑な思いに入れ替わってしまった。
『アンソニーなら、アンソニーなら......』*3
『アンソニーなら、なんだっていうんだ!? え? もっと、やさしいって言いたいのか?奴は死んだんだろ? 死んだ奴のことがどうしてわかる?』
──胸の鼓動の音は大きくなっていった。
キャンディは音を消し去るようにアーロンにしがみついた。
(そうよ!あなたの言う通り、死んでしまった人の何が分かるっていうの!......そんなの分からないわ!......じゃあ、生きていても二度と会うことが叶わないあなたの......あなたの一体何を分かれと言うの?)
******
キャンディは、テリィのことを思っていた。『──ぼくは何も変わっていない』*1
キャンディは、再びその言葉を読み返した。
変わりはないか?
──彼はそう......訊いている。キャンディは、エメラルドの婚約指輪をもう一度見つめた。
(私、......婚約したの)
(返事なんて、書けないわ......よね? )
キャンディにはどうしていいのか──分からなかった──。
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参考資料
*4
名木田恵子著
小説キャンディキャンディファイナルストーリー下巻
祥伝社 2010年11月10日 発行
28-29頁*1
上記と同じ
283頁
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The One I Love Belongs to Somebody Else 〜それでも君を愛してる〜 By Alexa Kang
Fanfic小説キャンディキャンディファイナルストーリー後に書かれた、Alexa Kang による二次小説を、ご本人の許可を得て翻訳、編集した日本語版です。編集にあたり、若干のご協力を頂きました。いがらしゆみこ氏、名木田恵子氏が生み出した登場人物にあわせ、二次オリジナルキャラも登場します。